暁降ち、機関車一両だけの通勤列車が出発の刻を待つ。凍てついた構内の空気を震わせるのは、蒸汽の呼吸とカメラのシャッター音のみ。中国の西の果て、時代から取り残されて生き続ける最後の建設型たちが、最後の年の瀬を迎えようとしていた。

中国での蒸汽の撮影の中でも、最も難しいのはバルブ撮影であったと思う。
特にここ三道嶺の東剥離站にはナトリウムランプがあり、光源には困らないものの強烈なオレンジ色を照らすのであった。このオレンジ色に照らされる蒸汽と、背景の吸い込まれそうな蒼さを持つ夜空の組み合わせは言葉を絶する美しさなのだが、いかんせんカメラでこの雰囲気を切り取るのが難しいのだ。もたもたしていると、すぐに背景の空が白みだしてしまう。露光時間が数十秒になるバルブ撮影では尚更。そんな中、このカットはほぼ唯一と言っていい、納得できるバルブ写真となった。今でも眺めていると、建設型の息吹が聞こえてくるようである。

(2016年12月30日 中国新疆ウイグル自治区哈密 三道嶺煤砿にて)


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