三道嶺煤砿(2016/12)

2016年12月29日。1年ぶりに降り立った哈密空港は、懐かしい寒さで私を迎えてくれた。新疆ウイグル自治区の哈密三道嶺への訪問はこれで二度目であり、そしておそらく最後となる。 2016年8月の遼寧省阜新の炭鉱鉄道が無煙化され、中国蒸汽が大規模に残っている場所はついにここ三道嶺のみとなってしまった。しかしこの三道嶺でさえ、2017年の早いうちにトラック輸送へと切り替えられる予定だという。私は中国と、そして彼の地に生きる蒸汽との稀有な縁に導かれて、カメラのファインダー越しに一つの歴史が終わる瞬間を見るため、再びこの地に立った。 1年前と変わらない紅い大地。建設型たちは、この日も零下10度を下回る空気に白煙をたなびかせ、矍鑠としていた。

10両以上連なった石炭貨車を牽引し、建設型は連続上り勾配を力一杯駆け上がってくる。

線路の傍まで降りてきた。ここに立つと、駆け上がってくる蒸汽の音が崖に反射して届き、一層の迫力である。列車が目の前に来た時には、割れんばかりのブラスト音が様々な方向から響いてくる。

小高い丘の上から「見返り美人」のようなカットを。夕陽が紅い動輪をさらに鮮やかに染めあげる。

朝の東剥離站でのバルブ。この駅は強力なナトリウムランプがあり罐や構内をオレンジ色に照らし出すために、思い通りの色味を出すのが本当に難しい。一枚の撮影に時間がかかるバルブ撮影、空の色はどんどん変わって行ってしまう。

12月31日、朝起きてホテルの窓の外を眺めると、なんと雪景色。雪を頂いた地面の上に列車が浮かび上がり、バルブ撮影も一味違うものに。三道嶺ではごく珍しい降雪に大喜びしたが、結局この後の滞在中はずっと曇り空に悩まされることになった。

また別の日に撮影したバルブ。決して広くは無い駅の構内には、日本人と中国人の撮影者が大勢。他の人が写り込まないカットを手にするのに苦労した。

少し違う雰囲気のバルブにも挑戦してみた。職員の詰所と建設型、樹氷を頂いた木。左側の電柱の灯りがついていたら良かったのかもしれないが、そう思うようには行かぬものである。

谷底の積み込み場からの発進。煙よし、前照灯よし。これで晴れていたのなら、と思わなくも無いが、曇り空の雪景色というのもまた水墨画のようで趣がある。いかにも最果ての汽車という雰囲気である。

ただ一度だけ、雪晴れを収められたことがあった。上空を流れる雲が暫し途切れた、一瞬ともいうべき晴れ間を突いて建設8081が駆けて来た。迫ってくる列車を前に、しばし悩み、そしてカメラを縦に持ち替えた。青空と雪景色、そして白煙の現役蒸汽。感無量である。

滞在中は北線にも何度か赴いた。罐は逆向きであるが、障害物の無いストレートを歩くようなスピードで進む建設型はまた格別である。残念ながら、北線の名物であったプッシュプル列車はとうとう見られず終いであった。

北線では思わぬ成果もあった。2016年の大晦日、この日は「花火」が無いと予め判っていたため、日没まで北線で撮影を続けることに。沈みゆく太陽に気を揉んだが、ここはひとつ賭けに出よう、と線路脇から大きく離れて望遠での夕陽バック撮影を試みた。果たして、建設型は長い貨車を牽き、黄昏時の空に煙を棚引かせながら、ゆっくりとファインダーの中を走り去って行った。 機材を片付けバスに戻ると、もう太陽は雲の向こうに隠れてしまっていた。

前回の三道嶺訪問では最初の夜から「花火」を拝むことができたが、今回はなかなかに苦戦した。というのも、他のツアーも同じように花火を狙うため、我々のツアーガイドであり三道嶺の花火のプロフェッショナルたる王さんが思うように行動できないことがあったのだ。王さんにおいては、花火の実現に関して昨シーズン以上の並ならぬご苦労があったに違いない。

1月2日、最後の夜。残雪の三道嶺にて、ついに花火が噴火した。もはや感覚の無い指先に全神経を注ぎ込み、轟々と迫り来る機関車にピントを合わせる。

実はこの時の花火は、我々の目前に来た時に最大の噴火を魅せてくれた。私は望遠のズームレンズを構えていたために、一番の瞬間をカメラに収めることはとうとう叶わなかったのだが…。広角のレンズを構えていた諸氏の写真を拝見し、ため息ひとつ。

最終日は、念願の機務段撮影へ。昨シーズンの撮影時は作業員がみな休憩に入ってしまい寂しい雰囲気だったが、今度はしっかり作業中であった。蒸汽と人との闘いは、なにも走行中だけではない。この機関庫の中での闘いというのも、また至上の被写体である。

これぞ、もうひとつの「花火」。修理中の建設8053に溶接機が充てがわれ、見事な火花を散らした。慌てて三脚にカメラを据え付け、スローシャッターで撮影。

撮影中寄ってきた犬。撮影の合間にメンバーの一人がおやつの銅鑼焼きを分け与えて以来、すっかり懐かれてしまった。さて、このワン公は、次の冬も撮影家のおこぼれに与ることはできるのだろうか。全ては、ここの建設型が生き長らえるかにかかっている。

中国現役蒸汽最後の聖地での撮影は、かくして幕を閉じた。昨シーズンと今シーズンの二度も三道嶺撮影ツアーへの参加を快諾してくださった小竹氏と、現地での快適な撮影のために奔走してくださった王国軍氏のご両名には感謝してもしきれない。願わくば、来シーズンも同じ地で再びカメラを構えられることを…。

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