沫江煤電(2015/06)

4月に沫江煤電をプチ訪問し、来年くらいにしっかり時間を割いて再訪問しようと考えていた矢先に、衝撃的なニュースが飛び込んできた。すなわち、沫江煤電が2015年7~8月をもって廃止されるという知らせである。
もはや一刻の猶予も許されない状況だった。すぐ四川省でいつも世話になっている青年旅行社に宿の手配を頼み、期末試験を一週間後に控えた6月25日に私は四川省成都に飛んだ。

25日のうちに楽山に入り、26日の始発のバスで沙湾へ向かった。それでも草バ[caoba]の街に着いた時には日が高くなっていた。

前回とは違う機関車がやって来た。沫江煤電のラストナンバーである8号機関車だ。どうやら職員輸送のための運転らしい。

折り返しをアーチ橋で待ち受けた。緑と黄色の縞模様は、木々に溶け込む迷彩塗装のようだ。

8号機関車が車庫へ引き返していったので街を散策してみたが、あまりの光景に私は我が目を疑った。あれほどに立ち並んでいた集合住宅が方方で取り壊され瓦礫の山となっているではないか。ちなみにこの場所は前回訪問時の画像6枚目と同地点から撮ったものである。

前回来た時には確かにここに人家があったのだ。この街はまるで記憶喪失になることを選んだかのようだった。

気を取り直して駅に戻ってきた。ちょうど小学校の下校の時間で、鳥籠客車は好奇心旺盛な少年でいっぱいだった。

私も列車に乗り込み、終点の老砿を目指す。それにしても突然の訪問者に対して見事なほどにフレンドリィな少年たちである。

破壊されかけた街を見た後だけに、子供たちの笑顔には癒される。

終点に到着した。少年たちに招かれ、私も彼らの家のある方へ付いて行ってみることにした。右下に写り込んでいるのは少年の一人が私に差し入れてくれたものである。朝から何も食べていなかったので有り難かった。

私を山の方へ連れて行って何をし出すのかと思えば、「一緒に泳ごう」と誘われた。遊び盛りの少年たちは次々にパンツ一丁になって川に飛び込む。私もついにはパンツ一丁で飛び込んでしまった。替えのパンツも無いと言うのに…。

あまり娯楽のない街というのもあるのだろうが、私は彼方此方へ連れまわされた。私の言動を逐一スマホで撮影し出す少年まで現れる。私が中国語の単語を一つ話せば大騒ぎになり、一つ聞き間違えればまた大騒ぎである。

少年たちの住むマンションに招かれた。お世辞にも綺麗では無いが、これこそ中国の生活のリアルというものなのかもしれない。

一緒にゲームで遊び、テレビを見た。私にはさっぱり内容が分からなかったが…。

数時間の後、少年たちと別れ改めて老砿の街を散策する。沫江煤電よりさらに軌間の狭いナローゲージ線が炭鉱まで伸びていたが、どうやら既にその役目を終えているようだった。

線路伝いに歩いて草バに戻る。素敵な団扇を持ったおばあさん、後ろには凸電機の列車が写っている。

列車が草バの街に戻ってきた。この日はここまで撮影してバスで楽山に戻った。

沫江煤電2日目にして最終日(さすがに期末試験を目前にしてそう長くの滞在は不可能だった)。始発のバスを待っていると時間がかかりすぎることを前日に学んだので、楽山のホテルから沫江煤電まで景気良くタクシーを飛ばした。列車の撮影の前に、草バの朝市で腹拵えをする。

寂れてしまった草バの朝、軌道に椅子を運び出し煙草を吹かす男性は何を思ったのだろうか。

始発列車が発った。くよくよしていても仕方ない、残された今日という時間で撮れるだけを撮ろうと心機一転。

一階で雀荘を営む商店。草臥れ具合がなんとも形容しがたい。

短い滞在時間ではあったが、草バの人々は本当に親切に接してくれた。実は滞在中に私が携帯電話を紛失する騒ぎがあったのだが、街の奥様方が総出になって探してくださり無事発見されている。

新井炭鉱を訪問する。かつてはナベトロが縦横無尽に駆け抜けていたらしいが、ご覧の通り訪問時にはすっかり寂れ果ててしまっていた。

へろへろに伸び、何故かX字にクロスしている線路。この炭鉱が現役であるときに訪問できていたらどんなに良かったことだろうか。

敷地内の随所に、工場から取り外されてクズ鉄売りにでも出されるのであろう品々が積み上げられていた。赤錆びた無蓋車が一両だけ、せめてもの情けのように線路上に残されていた。

私の沫江煤電での最後の撮影には、かつて向陽線が分岐していた隧道口站を選んだ。二股に分かれる線路を示す駅名標が味わい深い。そして、私はこの愛らしい鉄道に別れを告げた。二度と逢えないとしても、別れの言葉は「再見」である。

聞くところによると、予告通り8月には沫江煤電の列車の運行が停止したそうだ。列車に乗って下校していたあの少年たちは今、どうやって通学しているのだろう。そればかりが気掛かりでならない。

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